2007年07月13日

スペインの石 20

黒崎@スペインの石 20


残念ながら、社会の階層化の流れは止まらないという実感がある。
ネット上では、例えばPCと携帯との棲み分け、デジタルプアの問題が囁かれつつあるが、事はそう単純なものでもないようだ。ある部分では逆転現象もみられる。
http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/ja/h19/html/j1342000.html

ネットは一見フラットに見えるのだが、決してそうではない。
静かに棲み分けと細分化が進んでいるような感触がある。
これは文化的な断層と言って良いもので、そこには圧倒的な格差に似たものがあった。
ただそれは、一方からしか見えない偏光版である。

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「日本の貧困研究」(橘木俊詔・浦川邦夫著:東京大学出版会:2006年)という本がある。
著者は京大の先生で、河上肇「貧乏物語」の系譜という側面もあるが、前掲書ではいわゆる近代経済の手法を用い、わが国の経済格差の諸相を分析している。
ちょうどこの本が出た頃、時の竹中総務大臣は「大問題としての貧困というのはわが国にはない」という発言をしていた。
この場合の貧困とは、古典的な飢餓などを指しているのだろう。

「相対的剥奪感」
という言葉が社会学にあって、私も90年代初めに耳にしたことがある。
次に出てきた概念が「社会的排除」という捕らえ方である。
これは社会への参与が実質的にどれだけ奪われているのかを指標として数値化しようとする試みであった。
絶対的貧困と相対的貧困。
という概念は以前から提唱されてきたものだが、それがより深化したものだと考えればよい。

例えば行政からの給付、生活保護などを受けている方が、パートタイムでほぼ最低賃金近くで働いている方々よりも可処分所得が多くなる、といった歪な現象が散見して久しい。いわゆるワーキングプアの問題である。これは生活保護費の切り下げといった負のスパイラルに繋がってゆく。

ネットカフェ難民とは、日雇いのワンコール・ワーカーのことを多くは意味するが、彼ら専用のサイトもあちこちで散見するようになった。
そこに掲載されている広告が世相である。

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出会い系サイトとネットカフェ難民。
SNSとマルチ、またはカルト商法。あるいはカルトそのもの。
それらを支える様々なツール群。そして人物像。
仔細な分析は割愛するが、90年代以降の大きな社会変動というものが背後にはある。
現代的貧困とネット。
その様々な様相を暫く眺めてきた、というようなところだろうか。

posted by 黒崎 at 09:25 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

2007年07月12日

流れる 2

黒崎@流れる 2


「流れる」というのは、幸田文さんの代表作である。
父、露伴のことを書いてから、それが望外の評価を得、その時に単身者だった彼女は作風に行き詰る。
手元に原本がないのでうろ覚えだが、いわゆる柳橋界隈の花柳界に住み込みで働く。時に47歳である。
甘さのほとんどない描写は、女性版のヘミングウェイ、もしくはハメットに近いと言っても大袈裟でもなかろうか。

芸者は一人分の出前を取る。
バナナひとつ。現金払いである。

ところどころ匂うように的確な描写があった。
例えば媚びながら節度を保ち、崩れ堕ちる女性の柳腰を描いたところである。
実際は柳でもなんでもないのだが、そう見せているところが芸の力なのだと、読者はほぼ10年が経ってから気づいたりしていた。

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posted by 黒崎 at 12:32 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

流れる

黒崎@流れる


ネットがフラットだというのは全くの嘘である。
ブロックひとつ隔てると、とたんに風情が変わるのが都市というものであるが、都市には隠れ家もあり、ポチを連れた物乞いもいて、億ションもその下にコンビニもある。

皆ほとんど同じものを食べているのだが、無駄の扱いが違う。
ここを節約し、ここを使おうというあれこれの差配だろうか。
この按配というのはなかなか身につくものではなく、例えば食事の仕方ひとつで分かったり分からなかったり。
別れた女への言葉。
酒の飲み方。


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posted by 黒崎 at 12:30 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

西の風 3

黒崎@西の風 3


例えばあるブログに、ベランダの写真が載っている。
仕事の話も書かれているが、その行間を読めるひとが何人いることか。
が、分からなくてもいいのである。
プロの世界とはそういうものらしい。

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先日六本木の坂道で飲んだ知人がこんなことを言っていた。
数年くらい前から、ネットに情報を流すことをやめたのだと。
何故、と尋ねても答えてくれない。
何時から、とくりかえすと、そうだね個人投資のブームがあったでしょう。
確かそれは、LDの株が暴騰していた頃だったと思う。
今それがいくらになっているか、記すには忍びないのではあるけれども。

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posted by 黒崎 at 12:20 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

西の風 2

黒崎@西の風 2


あるとき友人がこんなことを言う。
探偵は場末を歩いたが、場末に住んでいた訳じゃないだろう。

書棚を捲っていたら、手元にフリスコの冊子が落ちてきた。
中に見覚えのある顔がある。

The Dashiell
Hammett tour
takes visitors
down a dark
alley into San
Francisco's
hard-boiled past

ハメットはサンフランシスコにいたことがあったのか。
確かめようとは思わないが、であっても不思議ではない。
多分10年ほど前、私はそこに行っていた。

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#1921-1929
posted by 黒崎 at 12:17 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

西の風

黒崎@西の風


もう桔梗が出ていた。
まだ色は薄い。
駐車場に停めてから雨が強くなり、上着が少し濡れた。

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posted by 黒崎 at 12:15 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

2007年07月10日

梅雨寒

黒崎@梅雨寒


揺れは自分の影である。
漠然とした不安である。
10年経った時、どこで何をしているのか想像がつかない。
5年または3年でも同じだ。
そこへゆこうという気がしない。
いったところで同じだろうともおもっている。
書物は慰謝のために読むが、繋ぎあわせて考えることが苦手で、多分それは実生活と関係が遠いからだろう。なるべく難しいものを買う。
雨の中、蝙蝠傘をさして戻ってきた。
ガラスに映る男の顔が自分だということに納得がいかない。
自分にとって社会とは何なのか、わからないままいくつになる。

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posted by 黒崎 at 22:37 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

偏光版

黒崎@偏光版


一方からは光を通すが、片方からは無理である。
見えないものを見たつもりになって、結局は自分を語る。
いつも思うのだが、些細だけれども大事なところを見落としていて、実際よりも大きく、または小さく見積もってゆく。
これを詰めの甘さというのだが、35を過ぎると誰も指摘してくれない。
揺れるだけだ。

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posted by 黒崎 at 22:33 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

2007年07月09日

スペインの石 19

黒崎@スペインの石 19


構造改革の後、この国のかたちは大きく変貌した。
中流崩壊、中流絶滅などと指摘されて久しい。
残るのは君はそのままでいいと囁かれた「オレサマ」の群れであって、彼らの部屋には食器がない。


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posted by 黒崎 at 15:21 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

スペインの石 18

黒崎@スペインの石 18


いつだったか甘木君に勧められて「莫逆家族」(田中宏)という漫画を読んだ。
ヤンキーの30代。
それにオトシマエをつけようとする物語であるそうだ。
池袋の雑居ビルにはそのバック・ナンバーが並んでいて、セミプロのお姉さんたちが熱心に読みふける。

テーマのひとつは児童虐待である。
父がいなかったり、母がいつも女であったり。
前述の漫画は「バクファミ」と呼ばれるのだが、あたかもそれは、仮想家族を探す旅のようでもあった。

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posted by 黒崎 at 15:19 | TrackBack(0) | 夜話 | 更新情報をチェックする

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