「流れる」というのは、幸田文さんの代表作である。
父、露伴のことを書いてから、それが望外の評価を得、その時に単身者だった彼女は作風に行き詰る。
手元に原本がないのでうろ覚えだが、いわゆる柳橋界隈の花柳界に住み込みで働く。時に47歳である。
甘さのほとんどない描写は、女性版のヘミングウェイ、もしくはハメットに近いと言っても大袈裟でもなかろうか。
芸者は一人分の出前を取る。
バナナひとつ。現金払いである。
ところどころ匂うように的確な描写があった。
例えば媚びながら節度を保ち、崩れ堕ちる女性の柳腰を描いたところである。
実際は柳でもなんでもないのだが、そう見せているところが芸の力なのだと、読者はほぼ10年が経ってから気づいたりしていた。
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