「俺が一両で買ったのはそなたの身の上話だ。その身体に一両の値打ちはない。抱いて寝ればうらぶれるばかりだ」
市川雷蔵の声で読むと、そういうことになる。
物語はここから展開してゆくのだが、割愛する。
ダンディだと言われていた柴田氏は、もともと純文学の人であった。
無骨で、純情で、とても器用とは言えない小説を同人誌にコツコツと書いていた。
初期の短編には狂四郎の原型のような姿勢が、苦い姿勢で滲んでいる。
「鶴松、見ておけ、これが武士というものの姿だ」
つまるところ、組織に管理されたひとの相克を描いて、当時の知識人、多くのサラリーマンの多大な支持を得た訳でもある。
高度成長の盛りの頃、各種週刊誌に最も勢いがあった頃の物語である。
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